音楽と仕事

音楽中心の生活が送りたかった。


若い頃は、そんな気持ちの伝え方さえ粗削りだったけれど、

そうしたいのなら芸術としての音楽の価値だけじゃなく、経済における音楽の価値も考えるべきだった。

むしろ経済のことをしっかり考えてこそ、行きたい場所に行けるようになることを。

自分たちの音楽の居場所も見つけられるようにもなることを。

もっと早く気づけば良かった。


とは言っても、十数年前の自分にそんな賢さはなくて。

あの頃は、生まれたばかりのITが全ての産業を席巻していくなか、音楽に近そうな業界にひたすら身を置こうとしていた。

音楽から芸能。

芸能から出版。

出版から飲食。

飲食から農業。

結局そんな生活を続けているうちに、本気で知識に飢えるようになっていったんだけど。

同時に、蓄えてきたノウハウをいったん整理し、独自の理論に昇華させたいと考えるようにもなっていった。


そこで、まさかの大学復帰。


いまいち身が入らなかった工学部の学生としてではなく、今度は法文学部の学生として。

起業、経営、経済、政治、そして、簿記や会計理論。

朝から晩まで好きな勉強が好きなだけできる環境があまりにも幸せで、思わず大学院にまで進んでしまった。


「外部効果」という言葉を知ったのは、まさにそんなとき。

勝手な解釈で言えば、「LIVEを開いた自分が赤字でも、会場周辺の店は得する」って話だったと思う。

しかし、その頃には「得した店から報酬を集めればいい」という話で終わるほど、現実が甘くないことは充分分かっていた。


卒業と同時に会社を設立。


大学院で完成させた独自のマネジメント理論を実行に移し始めた。

自分のことばかり考え、自分の夢しか追ってこなかったツケが来て、すぐにある種の限界を迎えたけれど、

一つの出会いが精神的に疲弊する自分を救ってくれた。

それは、何もしていないのに、ただ関心を寄せるだけで物凄く感謝される世界。

他の世界でどんな取引をしてみても、これほどまでに感謝されることはなかったからこそ、本当に新鮮だった。


自分なりの一途さで夢を追いかけ始めて、もうすぐ15年。


世の中はどんどん厳しくなり、ついていけなくなる人たちも確実に増えている。

しかし、自分なりの解決策で彼らをできる限り助けていきたい。

その取っ掛かりが、1つの特許、2つの会社、4つの事業所、6つの事業。

設立から6年経った今ようやく、一緒に働けば彼らに「食」と「住」を提供してやれる環境が整った。


けれども、経営の多角化は情報量を膨張させた。

そして、それらを一元管理できるシステムの開発の重要性を高めていった。

ところが、独学による試行錯誤が生み出したノウハウは、思わぬ2つの恩恵をもたらした。


一つは特許取得。

もう一つは、様々な方面から舞い込んでくるようになった相談案件。


おかげで、ちょっと時間はかかったけれど黒字化もなんとか達成。

音楽も、ITも、数ある案件の一つとして埋もれてしまったことで、

周囲からはすっかりコンサルタントとして認識されるようになってしまった

…という副作用はあったけれど。

今度は自分のためだけじゃない夢を描こうとしてるから、

少しはマシになったんじゃないかな。


「ちゃんと音楽してるの?」


よく聞かれる。

どんなにキツい生活でも、この旅路の足跡ひとつひとつは曲として記し、唄い続けてきたから、

120曲以上のオリジナルと20曲以上のフルバンド音源が手元にはある。

今年、本格的にMV(ミュージック・ビデオ)の制作も開始した。

すでに2曲目のMV制作や3曲目の音源制作にも着手してる。

後悔はない。本当に愉しかった。


けれどもまだ、夢は終わっていない。